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栄養に関する情報

褥瘡(床ずれ)ケアを考える

監修:東京警察病院看護部
(褥瘡なおそう会 関東支部世話人)
大沼 扶久子
出典:「難病と在宅ケア」

大沼扶久子
目次
  1. 褥瘡の発生原因
  2. 予防の観点から見た除圧
  3. 失禁
  4. 栄養
1.褥瘡の発生原因

現在、大学病院や急性期病院では、入院期間が減少し平均在院日数が17日以下となってきています。それは、医療依存度の高い患者さんが在宅へ移行しているということであり、介護度の高い患者さんが在宅介護・医療を受けているということです。

在宅ケアという環境的にも物質的にも限界がある中での、さまざまな継続治療は介護者の方や、また対象者、そしてケアを提供する医療側、例えば訪問看護師等にも課題は大きいと考えます。その中でも一つの課題でありかつ関心の高い領域に褥瘡があります。褥瘡(じょくそう=床ずれ)は同じ姿勢を2時間以上取り続けた時、局所に循環障害が発生し組織の一部に壊死や潰瘍をきたす病態であり、褥瘡の発生には様々な原因が考えられます。

  1. 同じ姿勢で寝ている、あるいは車椅子等に正しく座れず同じところに常に圧(体圧)が加わっている
  2. ご自分で体の向きや位置が変えられず、体がずれて皮膚が擦れてしまう
  3. 食事が十分に取れず栄養状態が低下している
  4. オムツを常時着用し、かつ尿失禁や便失禁等の状態が続いている
  5. 介護者の高齢化等により介護力が低下し、効果的に予防措置が取れない
  6. 対象者の原疾患に褥瘡治癒を遅延する、あるいは悪化しやすい病態が存在する

等です。褥瘡を発生しやすい対象者は、全身状態的にも良好とは言えない状態であるため、在宅ケアの中において新たに褥瘡を発生することは、ご本人は勿論のこと、介護する方々にとっても身体的・精神的負担が大きくなることは容易に想像できます。褥瘡の治療において最大の治療法は予防ですが、実際のところ医療側の褥瘡ケアや治療への関心はここ数年ようやく高まってきたのも事実です。

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2.予防の観点から見た除圧

 褥瘡予防の中で重要な要素に除圧があることは皆様もご存知の事と思います。しかし体圧分散寝具(除圧マット等)も使い方やそれぞれの素材や性能を把握しないと効果も半減します。例えば体圧分散寝具を選択する場合、厚みは重要なポイントであり最低でも10cm以上の物を選択する事をお勧めします。

またその中で電源を使用する空気調節型のエアマットの場合、マット内を空気が循環するため使用者の体温が下がりやすく血尿等を併発する場合があります。その為室内温度に注意しましょう(26~28℃程度)。 現在高齢者で在宅療養をされているほとんどの方は介護保険を利用し体圧分散寝具をレンタルして使用される場合が多いと思いますが、体型・体重・骨突起状態・ご本人の活動性・基礎疾患・介護者の介護力を加味し選択することが大切です。

エアマット型の寝具は定期的な底付きチェックを行う必要性があり、また過度の空気加圧はかえって褥瘡発生の誘引となります。老老介護(高齢者同士の同居による介護)といわれる状況下では安全性を考え、特殊ウレタン型の体圧分散寝具がよいと思います。 多くの体圧分散寝具は防水加工が施されているため蒸れ易いという欠点があります。炎症性疾患のある対象者(例えばリウマチがあり、あまりご自分で動けない患者さん等)へ用いるときは皮膚の観察は大切です。

では体圧分散寝具がない場合どのようにしたら良いのでしょうか? 以前、筆者は病棟で骨突起の著名な高齢の患者様に対し羽毛かけ布団を横に二つ折りにしたものを2組重ね、ベッドに置き除圧を試みた経験があります。羽毛布団は柔らかく吸湿性・吸水性に富んでおり、現在では家庭でもかなり普及しています。

万が一、尿などで汚染させたとしてもドライクリーニング用洗剤で洗濯可能です。また羽毛布団を取り扱う2大メーカーに確認したところ、尿汚染であれば晴天で数時間干す事で羽毛の柔らかさは回復するとの事でした。

羽毛布団を用いる方法は体重が軽い場合に限られますが、体圧分散寝具がない場合には活用できると考えます。また体圧分散寝具使用時、蒸れて皮膚障害の発生が危惧される場合、薄めの羽毛布団を寝具の上に置き、吸湿・吸水性を強化する事も可能です。

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失禁

 失禁は介護される側・介護する側の双方にとって精神的・身体的に負担が大きく、また失禁により皮膚障害を起こす可能性が高い事から如何に皮膚障害を未然に防ぐか、あるいは最小限にするかは褥瘡予防や治癒の促進の観点からも重要です。

1)尿失禁におけるオムツの工夫
男性の場合

陰部に尿とりパットを巻きその上からお弁当箱が入るくらいのビニール袋を被せます。そうする事で尿を局所的に採取する事が出来ます。またオムツも広範囲に汚す事が少なくなり経済的です。(尿取りパットは500cc程度の尿を吸収する事が可能です。)

女性の場合

女性の場合も男性と同様、尿とりパットを活用する事をお勧めします。しかし一回尿量が多い場合等は尿取りパットでとりきれない場合があります。このような場合はオムツ内に尿が出来るだけ広がらないように工夫します。

図1
図1
*尿取りパット裏のビニール面側あるいは不燃綿側を一枚のみとり、図1のようにはさみで切り込みを入れる。
*裏に切り込みを入れた尿取りパットとパンパース型オムツ裏面等を組み合わせ使用する。

切込みを入れた尿取りパットを併用することで、多量の尿失禁でも女性の場合尿が広がらずにオムツ内に吸収する事ができます。しかし、女性の場合長時間尿で汚染されたパットが陰部に付着する事で皮膚障害や感染が発生しやすくなりますので注意しましょう(図2)。

2)下痢便による便失禁

下痢便は便が不消化状態で排泄されるため、皮膚障害が起こりやすくなります。また肛門部を拭くときの刺激で発赤や痛みを発生することがあります。
下痢による失禁をオムツ内に放置すると対象者への苦痛や負担を大きくするため、できるだけ早く処理することが大切です。

図2
図2
例えば臀部の●部分に梅干大の、綿球を挟み込むことで、土手を作り下痢便が仙骨部に回りにくくなります。或いは新生児用の紙おむつを活用し肛門部を中心に成人用の紙おむつとセットで使用することにより下痢便の吸収を促進します。
また合わせて褥瘡部分を便汚染させないために、ガーゼの上から生理用ナプキンでガーゼを覆うように当て周囲をしっかりテープで固定すると更に創部への汚染が回避できます。

その場合、肛門部のふき取りに薬局やドラッグストアなどで市販されているサニーナ(スプレータイプ・ペーパータイプあり)を使用する事をお勧めします。サニーナには「アズレイン」という皮膚保護剤が含まれており、皮膚の表面を保護してくれます。

またやや発赤のある場合でもサニーナを継続的に使用する事で皮膚が正常化します。また褥瘡が仙骨部にすでに出来ている場合、創部の便汚染は治癒の遅延や悪化をきたします。下痢便が褥瘡部に出来るだけ回らない工夫が必要です。

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栄養

褥瘡と栄養の関連性は重要視されていますが、実際のところ何をどのくらい摂取したらよいのか断言することは難しく、検査データや喫食率(食べた量)のみの評価では、褥瘡発生リスクを予測することは難しいと考えます。

現在のところ栄養状態と褥瘡発生の程度と有無を直接結びつける医学的根拠も明確になっていないことから褥瘡予防としての栄養の視点を見落としがちになります。しかし高齢者の場合少なからず貧血状態が存在することやPEM(protein energy malnutrition:蛋白質・エネルギー低栄養状態)が問題となっており、食事における「質と量」を意識する必要があります。また、褥瘡の治癒過程において必要な栄養素もあり積極的に取り入れる工夫も必要です。

その際、下記の表に記載されている微量元素を摂取する場合、アイソカル®・ジェリーPCF等の栄養補助食品を活用することをお勧めします。

美濃良夫:III治療を始める前に A全身管理の重要性、褥瘡予防・治療ガイドライン(厚生省老人保健福祉局老人保健課監修)、照林社、1998
治癒過程 必要な栄養素
炎症期 炭水化物・蛋白質
増殖期 蛋白質・亜鉛・銅・ビタミンA・ビタミンC
成熟期 カルシウム・ビタミンA・亜鉛

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まとめ

褥瘡は単一的な原因ではなく様々な要因が複雑に絡み合っています。褥瘡があることで、ご本人や介護する家族の方々のQOLが低下することは、私としても非常に悲しい事です。

褥瘡なおそう会に参加し7年が経過しましたが、まだまだ学習し追及しなければならないことはたくさんあります。今後も熱意と決意を持ち、そして謙虚さを持って学び続けていきたいと考えています。

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